中学校で仲良し四人組だったクニアキ、アイ、トシキ、テツは、怖い話を話したり心霊スポットに行くことが好きでした。

夏休み前のある日、テツが言いました。

テツ『そう言えば、さとるくん(※)の都市伝説の話、知っているよな?』
アイ『知ってるよ。電話で呼び出すと24時間以内に真後ろにきて、そこで質問できないか、後ろを振り返ると、あの世行きのやつ。』

※電話で呼び出す怪異。公衆電話に10円玉を入れて自分の携帯電話に電話をかける。公衆電話の受話器から携帯電話に「さとるくん、さとるくん、おいでください。さとるくん、さとるくん、おいでください。さとるくん、さとるくん、いらっしゃったらお返事ください」と唱える。すると 24時間以内にさとるくんから携帯電話に電話がかかってきて、自分の今いる場所を知らせながら近づいてくる。そして最終的にさとるくんは自分の真後ろに来て、このときどんな質問にも答えてくれる。ただし後ろを振り返ったり、質問が思いつかなかったりすると、さとるくんにあの世へ連れていかれてしまうという。

テツ『そうそれ。実は、この手の話っていろいろあるんだけど、面白いやつがあるんだ。』
トシキ『どういう話よ?』
テツ『それがさ。さとるくんに質問するんじゃなくて、メダカ一匹くださいって言うんだ。』
トシキ『作り過ぎだろ。それ。』
テツ『まぁ。聞いてくれよ。そうすると24時間以内にさとるくんが水鉢を届けてくれるだ。その水鉢にメダカが一匹入っているんだ。』
クニアキ『タダなんだ。じゃ貰おうか(笑)。』
テツ『待て待て。最後まで聞けって。』
テツ『その水鉢は一つしかないんだ。水鉢に最初に触れた者はいいんだけど、触れられなかった人間はあの世に連れていかれちまうんだ。』
アイ『何それ。一人で電話すればいいでしょ。』
テツ『それじゃ。さとるくんは来ないんだって。複数でやると来るんだよ。』
ミク『でも、それじゃ一人しか助からないデスゲームじゃん。』
テツ『全員でさとるくんを出迎えれば助かるって話だぜ。』
トシキ『くだらねぇ。作り話にも程があるだろ。電話もイマドキ公衆電話なんだろ。』
テツ『しょうがねぇだろ。でもやってみないか。』
アイ『やるの~?ホントに~。』
テツ『暇なんだからさ。騙されたと思って。なっ。』
クニアキ『まぁ。やってみようか。』

仲良し四人組は、地元にある、いわゆる誰でも入れるような高校に進学することがほぼ確定的でしたので、特別に受験勉強するわけでもなく、とにかく暇なのでありました。そんな時のテツの提案でしたので暇つぶしにでもいいかと思い付き合うことにしました。

テツ『学校の近くに公衆電話があるから行ってみようぜ。』
クニアキ『早速やるのか?』

学校から歩いて5分のところに公衆電話ボックスがありました。

公衆電話

テツ『やることは一緒。公衆電話からさとるくんに電話をかけるんだ。』
テツ『掛け声がちょっと違って「さとるくん、さとるくん、メダカを1匹ください。いらっしゃたら返事をください。」でいいんだ。』
トシキ『わかった。わかった。やってみようぜ。』

代表でトシキがかけることになり、四人は受話器の近くに耳を近づけました。

トシキ『かけるぜ。』
トシキは電話をかけた。電話のコール音が聞こえる、コールが繰り返される。くだらねぇと思った瞬間、電話はつながりました。
トシキはつながらないと思ったのか驚いて『もしもし..。』と言ってしまいましたが、気を取り直して『さとるくん、さとるくん、メダカを1匹ください。いらっしゃたら返事をください。』と話して電話を切ろうとした瞬間。

受話器から『わかりました。』とはっきりと声がきこえたのです。

トシキは驚いて受話器を叩きつけるように置きました。

トシキ『今、きこえたよな。「わかりました。」って。』
アイ『聞えた。』
テツ『はっきり聞こえた。』
クニアキ『じゃあ。くるのか?さとるくん。』
テツ『..。』

何となく沈黙した四人でしたが、ちょうど週末はクニアキの両親が仕事でいないこともあり、クニアキの家に泊まることにしました。

それぞれ一旦、家に帰って、18時頃には四人ともクニアキの家に集まり、持ちよった弁当やお菓子を食べながら、ゲームに興じたり、ホラー映画を見たりと過ごしていました。

そして、深夜0時を過ぎた頃、突然、クニアキの家の固定電話が鳴りました。この時間に固定電話が鳴るのはありえません。

テツ『さとるくんじゃね。』
アイ『嘘?』
トシキ『来ねえよ。作り話だから。イタ電だって。』

クニアキが受話器をとって耳にあてると『さとるだよ。今、トシキの家の前にいるよ。ガチャ』と切れました。
トシキ『!?』
トシキ『きてるじゃねえか!』
テツ『落ち着けよ。トシキ。今、全員クニアキの家にいるじゃねぇか。さとるくん、間違ってるよ。』

10分後に再び電話が鳴りました。
クニアキが受話器をとって耳にあてると『さとるだよ。今、アイの家の前にいるよ。ガチャ』と切れました。
アイ『ひぃ。』と声にならない声をあげました。
トシキ『さがしてるじゃねえか!どうすんだよ!テツ!』
テツ『知るかよ。だけど本当かわかんねぇだろ。』

10分後に再び電話が鳴りました。
クニアキが受話器をとって耳にあてると『さとるだよ。今、テツの家の前にいるよ。ガチャ』と切れました。
アイ『ひぃ。助けて..。』と声にならない声をあげました。
トシキ『次、ここにくるじゃねぇか!どうすんだよ!テツ!クニアキ!』
テツ『四人で出迎えようぜ。四対一なら勝てるから。』
クニアキが口を開いて『四人で出迎えてみようぜ。さとるくんの話だと待ち状態だと最後は背後をとられて終わりだからな。』
アイ『無理でしょ!そんなの。』
トシキ『ねえわ。そんなの。』
テツ『..。』
クニアキ『このままじゃ、やられるだろ!出迎えるんだ!次電話きたら、皆で一緒に出迎えるぞ!!!いいな!!!』

10分後に再び電話が鳴りました。
クニアキが受話器をとって耳にあてると『さとるだよ。今、クニアキの家の前にいるよ。』
クニアキは間髪入れずに『さとるくん、待ってろ。今、迎えにいくから!』と受話器を切り『アイ、トシキ、テツ、行くぞ!』と声をかけて玄関に向かって猛烈にダッシュをして玄関の扉を開けました。

玄関の扉を開けてさとるくんを探しましたが、どこにもいません。

クニアキの家は一軒家で玄関の前は庭があり、さらに庭先に門があります。もしかしたら庭の門の前にいるかと思い、庭にでて庭の門を開けて道路に出ましたが、さとるくんはいませんでした。そして気付いたのですが、アイ、トシキ、テツもいませんでした。

クニアキ『何だ!あいつら、来なかったのか!』と再び、庭の門をくぐり、玄関に戻ろうとすると

家の方から『ぎゃーーーー!!!!』『きゃーーーーー!!!』と絶叫がきこえてきました。

クニアキは急いで玄関に戻り、玄関の扉を開けて『アイ、トシキ、テツ、大丈夫かぁ!』と叫びました。

すると玄関の土間の先の式台に、水鉢があるのがわかりました。

クニアキが『何だ!この容器は?』と見ると水鉢の中にはメダカが1匹泳いでおりました。

その瞬間、全てを察しました。

そして気付きませんでしたが、いつの間にか背後に誰かいるのがわかりました。

背中からぞくそくするものを感じ、とっさに振り向いてはいけない!と思いました。

すると背後から『クニアキ。来たよー。』と子供の声がしたのです。

このままじゃ、やられる!と思ったクニアキは、とっさに水鉢をつかみました。

すると『それはクニアキにあげるね。じゃお礼にもらっていくね。』と言い残した瞬間、

居間の方から『ぎゃーーーー!!!!』『きゃーーーーー!!!』と絶叫がきこえてきました。

クニアキはしばらく動くことができませんでしたが、我に返ったクニアキは靴を履いたまま居間に行くと、そこはもぬけの殻でした。

いくら三人を呼んでも、どこを探しても、三人は見つかりませんでした。

警察に連絡して捜索してもらいましたが、その後三人は見つかることはありませんでした。

そして、さとるくんにもらった水鉢はいつの間にか、なくなっていました(終)。



※最後に
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