台風の目

台風14号が日本列島を通過中ですが、九州地方を中心に各地で被害が相次いでおります。土砂崩れや大雨による河川の氾濫、暴風による建物の損壊など、各地に爪痕を残していくと思われます。

台風シーズンと呼ばれるのは7~10月でして、特に8~9月にかけて多くなっており、気象庁の台風統計資料(1991~2020年)では、年間発生数25.1回に対して、8月の発生は5.7回、9月の発生は5.0回であり、本土接近(※1)は年間5.8回にに対して、8月は1.6回、9月は1.9回となっています。

※1「本土」は本州、北海道、九州、四国のいずれかの気象官署から300 km以内に入った場合を指します。

発生はともかく本土接近は思ったよりは少ない感じを受けますが、毎年の事ながら屋外飼育をしているメダカ飼育者にとっては『やきもき』するシーズンであり、天気予想で上陸(直撃)予想がされますと『屋外メダカたちをどう(避難)しようか?』と家の備えや避難場所などの確認など、自分や家族のこともあり、メダカのことが二の次、三の次になってしまいかねません。

そこで台風が来る前に『屋外メダカをどう(避難)するのか?』を事前に決めておくことをオススメします。


やれることは僅かである
「それを言っちゃあおしまいよ。」となりますが、実は屋外メダカの台風への備えでやれることは僅かです。何故なら、メダカの飼育容器は飼育水はもちろん、底床の用土、流木や岩などレイアウト、水草が入っており、小さな容器やバケツなど移動しやすい容器以外のメダカ容器を持ち上げて移動することは困難なのです。

例えば、外寸が幅425mm×奥行き425mm×高さ312mmで、容量30Lの容器があったとしまして、1L=1kgなので、水だけで30kgもあります。実際には、水を満杯には入れませんので、容量は30L以下になりますが、水の代わりに底床の用土、流木や岩などレイアウト、水草が入っていますと、水よりは比重があるので、飼育水だけの容器より、はるかに重たくなります。

もちろん、飼育容器に何も入れないベアタンク飼育もありますが飼育水だけでも重いはずです。

そして標準的な角型タライの60型(大きさ60cm)になりますと60L=60kgにもなるのです。

とても重たい飼育容器を、台風が接近しつつあり強風や雨が降りはじめている中で行うのは、つらい作業ですし至難の業かと思います。

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何を備えればいいのか?
★大雨の対策
台風がくることへの備えですが、一つ目は、大雨が降ることで飼育容器が雨を受け止められずに水が溢れてきますので、一緒に生き物が流れてしまうことがあります。

大雨の脅威に水質水温の変化がありますが、これでメダカが死ぬことはありません。直接的な原因になることはないです。もし、台風後にメダカが死んでいたのなら、元々問題を抱えておりメダカが衰弱していたことが考えられます。

水温は雹(ひょう)でも降ってとても冷たくなる、大きな雹(ひょう)でメダカが潰れてしまったとかの得意な気象でない限りありません。

水質に関してですが、例え酸性雨(5.6pH以下※)の雨が降ったとしても、相当なpHでない限り、メダカが死んでしまうことはありません。

酸性雨の代表的な健康被害事例として、ロンドンスモッグ事件があります。

これは1952年にイギリスのテムズ川流域で、4日間で約4,000人もの人々が、酸性雨などの大気汚染が原因で命を落とした事件です。当時、イギリスでは石炭を主な燃料としており、燃焼する際には大量の二酸化硫黄などが排出されていました。

これが原因で、「レモンより酸っぱい雨」とも呼ばれる、pH1.5の非常に強い酸性雨が降ったと言われております。多くの人々が呼吸困難・チアノーゼ・発熱を患い、亡くなってしまったのです。

ただ、たしかに酸性雨の影響を受けやすい生物の代表は魚です。

通常であれば、川はpH7前後(中性)の数値です。しかし、酸性雨により水質が酸性化することで、そこを住処とする魚に影響を及ぼします。

一例として、北欧の国々では、冬になると酸性の汚染物質を含んだ雪が積もり、それが春になると川や湖に溶け出します。その結果、酸性に弱いとされるサケ科のタイセイヨウサケブラウントラウトが死んでしまうなどの被害が発生しています。

しかし、日本における酸性雨は、pH5.6以下の酸性雨(平成5年で4.5pH)が降っているものの、年々改善傾向にあり、現在は全国平均で4.8pHの酸性雨を観測されております。

メダカの棲んでいる全国の棲息環境でも降り注いでおり、酸性雨に大量死したことはありません。飼育下でも酸性雨が降り注いだとしても、濃度が高まって死んでしまうことはまずないと思います。

★強風の対策
二つ目ですが、強風に対する対策です。これは飼育容器がどこか遠くに飛んでいく対策ではありません。飛んでいくような小さな飼育容器(水量30L以下)であれば、もちろん室内に退避させるのがいいと思います。

ただし、台風で飼育容器が飛ばされるような風速になることは、そう滅多にありません。

近年で、風で物が飛ぶ、建物が倒壊すると大きな被害を出した台風は、2018年(平成30年)に25年ぶりに西日本を直撃した台風21号(アジア名:チェービー)が有名なのではないでしょうか。

台風21号は、大阪湾で関西国際空港(大阪府泉佐野市)が高潮で冠水した上、強風のため関西空港連絡橋にタンカーが衝突したましたし、JR京都駅では、改札口前のコンコースに屋根の一部が崩落した映像がニュースで多く報道されたのが思い出されます。

この14号は最大風速(秒速)46m(※2、※3)でした。多くの樹木、電信柱が倒れて、住宅倒壊も起こるような風速です。

※2高知県室戸市室戸岬では最大風速48.2メートル、最大瞬間風速55.3メートル、大阪府田尻町関空島(関西空港)では最大風速46.5メートル、 最大瞬間風速58.1メートルとなるなど四国地方や近畿地方では猛烈な風を観測し、観測史上第1位となったところがあった。また、四国や近畿地方では海は猛烈なしけとなった。

※3風速を表す次の言葉には、以下のような違いがあります。
  風速:10分間の平均風速
  瞬間風速:3秒間の平均風速
  最大瞬間風速:瞬間風速の最大値

あるメダカ飼育者の方は、マンションのベランダに設置していた直径50cm、重さ20kgの睡蓮鉢で、メダカとともの用土に水草を入れて育てていたそうですが、台風の直撃を受けて、いとも簡単に飛ばされてしまったそうです。

通常の風速(秒速)20mの台風であれば、飼育容器は飛ばされませんので軽くない限り容器が飛ばされることはありませんが、水草は飛ばされたり、茎が折れたりしますので強風の影響を受けやすいので隔離できる水草はしておきます。

メダカなど生き物も飼育条件や体の大きさなどによって強風で飛ばされてしまいますので台風に備えておきます。

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メダカの台風への備えは稚魚だけ
メダカの成魚(親)は、大雨が降ったり強風が吹きつける場合は、水底に潜り避難しますので、飼育容器から水が溢れてもメダカは水と一緒に流れ出ることはほぼありません(一例で弱っていて浮いているメダカなどは流れ出てしまうことはあります)。

一方、メダカの稚魚(1cm以下)は、あまり潜ることは得意ではなく、水面を泳いでおりますので、水と一緒に流れ出てしまいます。

★飼育水ごと稚魚を退避
飼育容器が動かせる重さであれば飼育容器自体を移動、飼育容器が動かせなければ稚魚を避難先の飼育容器に移動させます。台風が近づく中、1匹ずつ掬って移動させるのも大変ですので、飼育水ごと移してしまってもよいと思います。
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★布きれを容器の端にかける
他にも、布きれを飼育容器の端にかけて、水が溢れる前に流出させることもできます。毛細管現象サイフォンの原理をかけ合わせた対応です。

毛細管現象とは、外からのエネルギーなしで水が細い管を通って流れていく現象です。布きれでも布きれの繊維の隙間が細い管の代わりとなり、毛細管現象が起きるのです。

サイフォンの原理は、水を高い位置の出発地点と低い位置の目的地点を管でつないで流す場合、管内が水で満たされていれば、管の途中に出発地点より高い地点があってもポンプでくみ上げることなく流れ続ける仕組みを言います。

この2つが合わさることで、飼育容器に布きれをかけておけば、大雨による水が飼育容器の外に排水されるのです。ただし、激しい大雨が長時間になると、この仕組みでも排水が間に合わない場合があるのが難点ではあります。
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◆飼育容器の水位を減らす
また、雨が降って飼育容器の水位が上がることを予測して、飼育水を減らしてしまうのも手かと思います。ただし、台風一過(※4)の直射日光で水不足になることがありますので、台風一過になったら、すぐに足し水をしないといけません。

※4台風一過(たいふういっか)は、台風が過ぎ去ること。 台風が過ぎ去った後には上天気になることから、台風後の天気を指して「台風一過の青空が広がる」というような形で使われています。 
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★波板で蓋をしてもよい
飼育容器に雨が入らないようにするには、シンプルに蓋をしてしまうという手があります。蓋をしても蓋と飼育容器に隙間があるので酸欠になることはありません。台風一過後の直射日光により、飼育容器内の温度が上がって蒸れますし、風のない状況では更に温度が上がる可能性もあります。

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大型魚ほど水位が上がると飛び出し事故が多い
メダカの成魚(親)より大型魚である金魚、フナ、コイ、ドジョウは、大雨により飼育雪内の水位が上がることにより、水が溢れて流れ出るというよりも、飛び出すことが多くなります。

特にドジョウは「脱出王」の異名をとるほど、飼育容器の水位が多いと飛び出る、他に流木や石などレイアウトを使用して脱出してしまいます。

メダカの稚魚と同じく、飼育容器に雨水が溜まらない対策をとる必要があります。
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水草(水生植物)の備え
通常の風速(秒速)20m程度の台風であれば、ある程度の大きさの容器は飛ばされません。しかしながら、水草は、暴風、強風の影響をまともに受けます。メダカより水草の方が被害が大きいです。

一番の影響を受けますのは、草丈から当然と言えば当然ですがコガマやウキヤガラなどの抽水植物(根が水中で上部が水上に出ている植物)です。暴風、強風の影響を受けますので、茎が折れる、葉が千切れるは勿論のこと、夏までに地上部は相当大きく(重たく)なっていますので、鉢に植えていても、鉢ごと倒れてしまいます。

鉢ごと(横に)倒れますと、水棲生物(魚)の泳ぐ場所が少なくなりますので、元通りにしたいところですが、台風が通過中の場合は、また倒れて水棲生物(魚)にストレスを与えてしまう、ヘタをすると潰されてしまいますので、そのままにしておきます。台風一過になったら元に戻しましょう。

そして折れている茎や、千切れて原形を留めていない葉は、カットしてしまいましょう。カットしないと枯れてゴミになるだけです。
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次にホテイ草やドワーフロビンフッドなどの浮遊性植物(水面に浮かんで漂う)は、水面に浮いているだけの植物ですので、ちょっとした強風で株ごと簡単に飛ばされてしまいますので掬って隔離しておきます。

浮葉生植物(葉だけ浮いている)、沈水性植物(全てが水中)に関しては、大きく影響を受けませんので、そのままで問題ありません。

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飼育道具の避難も忘れずに
メダカなどの水棲生物、そして水生植物(水草)の台風への備えはしたのはいいですが、忘れがちなのは飼育道具です。

強風で軽い飼育道具は飛ばされてしまいますし、隣の家に飛んで、隣の家の物を壊してしまうこともあります。必ず避難させしましょう。
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こんなに備えたのに肩透かし・・。でも対策は続けましょう!
台風上陸、そして直撃を見越して、メダカや金魚などの水棲生物や水生植物(水草)、カブトムシやクワガタの昆虫などの台風への備えを万全にして「さぁいつでも来い!台風!」までとは言いませんが、準備が終わればテレビやインターネットで台風の進路を見守ることになると思います。

しかしながら、予想が外れて台風の進路がソレていき、また、台風が消滅して熱帯性低気圧になってしまい、結果いつもの大雨と変わらない・・・なんてことが割とあるものです。

せっかく、台風への備えを時間を割いて一生懸命やったとしても、予想に反して台風は来ずに、翌朝にでも元の状態に戻す。一度だけならまだしも、二度三度続くと、予報があっても『また台風来ないかも?』という心理になっていき、ついつい備えを怠ってしまいがちです。

そんな時に本当に台風が上陸して進路も予想通りにきてしまいますと、メダカたちが可哀想なことになってしまいます。

天気予報の予想通りでないことが続きますと『次も大丈夫だろう!』『来ないだろう!』という気持ちになりがちですが、台風上陸や直撃のの予報が出たら、面倒くさがらずに毎回対策をとりましょう。
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※最後に
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