最近、6月初旬に蛹化したカブトムシの成虫を掘り出しました。結果、オス2匹で羽化不全1匹、メス5匹となりました。繁殖となりますと、ちょっと心もとないオスの個体数ですので、外から入れることにしました。

外から入れるということは、外の血と交配して、今よりよい元気な個体が誕生するということを考えます。それはいわゆる近親交配を避ける意味ともとれます。

しかしながら、カブトムシやクワガタに近親交配という考え方はあるのでしょうか?

❖人間の場合

人間ですと、近親交配(=近親相姦)は社会的にタブーとされておりますし、遺伝的に近い者同士の交配は、遺伝子異常を発生させやすいという科学的な根拠が発表されています。

ただ、机上の理論ですので、実験結果があるわけではありません(実験できません)。

よく言われていますのでは、奇形や遺伝病などを発症する劣性遺伝が確率的に高まるとありますが、逆に優秀な遺伝の継承の可能性も高まるということも考えられます。

よく外国で、小さな集落や世間と距離を置いている大家族で、近親相姦が繰り返して行われており、何か事件が発生して発覚するケースがありますが、この手の場合は、子供をきちんと育てていないことや病気にかかっても医者にかかわることを避けたりして、病気で子供が死んでしまう、言葉をしゃべれない、家の中にずっといることで視力の低下、筋力の低下など、近親相姦が原因か判らないと思われます。

日本では近親での結婚は民法で規定されておりまして、民法第734条においては『直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。』と定められております。近親で交配しないように法律で定めているわけです。

『直系血族又は三親等内の傍系血族』のように親等数に制限がなく結婚できませんと書かれていますが、具体的には、どのような親族なのでしょうか。

それは、自分からみて下記の親族が該当します。
 ・兄弟姉妹
 ・兄弟姉妹の子供である甥っ子姪っ子
 ・おじおば

つまり上記の親族同士は結婚する事は出来ません(まぁ、結婚しないし、好きになったりしないよね。ちょっと想像できないですかね。)。

傍系血族の場合、直系血族の場合と異なり『三親等内』と親等数に制限がありますが、逆を言えば、自分からみて『四親等以降の傍系血族』であれば、結婚する事が出来るのです。

具体的には、自分から見て『甥っ子や姪っ子の子』や『おじおばの子である、いとこ(従兄弟/従姉妹』であれば結婚が可能なのです。

意外に近いですね。いとこ同士の結婚ですが、これでもレアなケースの結婚に該当するかと思います。

タブー視されている近親相姦ですが、人間はなぜしないのか?という疑問がありますよね。

これは、人間は近親交配を避ける仕組みを持っているからです。人間は思春期に入ると反抗期に入り肉親を拒絶したりしますよね。これは人間の本能なのです。嗅覚によって近親をかぎ分けるといった研究があるのです。こうしたことで人間は近親交配を防いでいるのです。

しかしながら、『近親相姦は悪い事なのか?』は、科学的な根拠というよりも、宗教的、倫理的な問題が一番大きいのだと思います。


❖人間以外は問題なし

人間以外の生き物はどうなのでしょうか?

実は人間以外の生き物に関して最近の研究では、多くの動物は子どもを作る相手を選ぶ際に血のつながりをほとんど考慮しないことが分かってきたのです。

この研究は『Nature』(2021年5月3日付)に掲載されています。

動物界では近親交配がタブーではない。あえて避けずに行われているその理由とは?

人間的な考えだと避けるべきと思われる近親交配だが、スウェーデン、ストックホルム大学の動物学者ライッサ・デ・ブール氏によると、逆にそれが望ましいような状況もあるという。

一番わかりやすいのは、ほかに子供をつくる相手がいない場合だ。赤の他人を見つけることが困難な状況では、たとえ相手が血縁者であっても、遺伝子を残せないよりマシだという考えだ。

ほかにも近親交配が望ましい状況はある。それはある動物がとにかく自分の遺伝子をできるだけ多く残したいと考えているようなときだ。

この場合、近親交配は素晴らしい手段となる。血縁者とは多くの遺伝子が共有されているために、それだけ自分の遺伝子を子供に伝えることができるからだ。

まだできるだけエネルギーの消費を抑えたいときにも有効だ。

たとえば近親交配を避けろというのなら、血縁者と非血縁者を区別する方法を身につけねばならない。

動物界では省エネはとても大切なことなので、学習コストを支払ってまで近親交配を避けることが必ずしも最高の戦略になるとは限らない。

なるほどですね。

ただ、哺乳類などの高等動物においては、近親間、つまり近い遺伝子をもつ生物の交配で先天的な障害を持つ次世代が生まれてくることは多いという研究結果や学説も以前として根強くありますので、上記の研究が、まだ完全な研究とは言い難い部分もありそうです。

❖カブトムシやクワガタの場合

結論から言いますと昆虫の遺伝子レベルでは基本的に近親交配をしても問題ありません。
人間などの哺乳類のような高等動物とは違い、昆虫では遺伝での近親交配の影響がでることはありません。

よく累代飼育していて近親交配で影響があると言われているのが以下の3つです。

・産卵しない、しても無性卵若しくは産卵数が極端に少なくなる。
・羽化した成虫が小さい(矮小化という)
・卵の孵化率の低下、孵化した幼虫の死亡率の上昇

しかしながら、これらの方々は大量飼育大量繁殖させていると思われ、言葉が適切ではありませんが飼育が『雑』になっていると思われます。飼育する個体数が多すぎて飼育管理ができていない、または確率論的に上記の事象が発生していると思われます。カブトムシ、クワガタを飼育していれば必ず発生する事象なのです。

実際には、クワガタは飼育下での近親交配15代目のF15までは大丈夫だということが知られています。これは20年近く飼育したことに相当します。

国産カブトムシに関しても同様で近親交配で小さくなるというのは俗説(=噂)で10年近く累代飼育(近親交配)しておられる方も実際にいます。

自然界の山林の中でも、産卵に適した場所というのはそんなに多くないはずです。そこに、メスが多数の卵を産んで、成虫が育つわけですが、当然ながら自然界でも濃厚な近親交配があるのが普通だと思われます。人間と違い、あまり高等でない昆虫に関してはそんなに気にしなくても良いと思います。


オークションで購入したカブトムシです。オスがやたら元気に動いております。
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飼育ケースに入れると潜っていきました。
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※最後に
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